逆転途中の地球磁場

100年400年7000年と地磁気が変動する様子をお見せしてきましたが、地磁気の変動のうち、最も振れ幅が大きなものは 逆転 というものです。読んで字のごとく、本当に逆転します。つまり、地磁気の極性 -- 今現在で言えば、地球という巨大な棒磁石のN極が南極付近にS極が北極にあること -- がひっくり返るのです。

この現象--地磁気逆転--は20世紀前半までに各地の古地磁気データから見つかり、本当にあったこととして定着していったのですが、その旗手だったのが京都大学教授だった松山基範博士です。彼は日本、朝鮮、および満州から玄武岩を集めて古地磁気方位を測定し、約100万年前より以前は地磁気の極性が現在と逆向きだったと主張しました。

実際に、現在の最新の知見では、約78万年前に地磁気はひっくり返って現在の極性を持つようになったことが知られています。さらに、それより以前には幾度となく地磁気極性が逆転を繰り返してきたことも判ってきました。 松山博士の功績をたたえ、現在では「約78万~259万年前の地磁気極性が主に現在と逆だった時代」を マツヤマ逆磁極期 と呼びます。それ以降、78万年前から現在までは同時期にやはり地磁気逆転について功績が大きかった Brunhes (ブルン、ブルネ、ブリュンヌ)の名前を取って ブルン正磁極期 と呼びます。

さて、地磁気逆転がなぜ起きたか、どのように逆転したかは、地球科学上大きくて未解決の謎の1つです。 ごく最近、世界中のマツヤマ-ブルン逆転境界(78万年前)の古地磁気記録をまとめ、その時の地磁気モデルを提唱する研究グループが出てきました。専門的に言えばこのモデルにはまだまだ不備が多く決定版とはとても言いがたいものですが、ここではそのうちの1つを紹介しましょう。 Leonhardt and Fabian (2007)による Matuyama - Brunhes 地磁気逆転境界(約78万年前)付近、つまりひっくり返っている最中の地球磁場変動モデルを使った磁力線、および、磁場の外向き成分(Br)と伏角(I)の変動マップです。

スクリーンショット(クリックで拡大): 磁力線と外向き成分(Br)
reversal transition field

KMLファイル:磁力線と外向き成分または伏角を同時に表示することができます。

おわび:以前のバージョン(MBB-Reversal_MFL_20080515.kmz, MBB-Reversal_Br_20080519.kmz, MBB-Reversal_Inc_20080519.kmz)にはバグがあってWindows/Mac環境でうまく動作しませんでした。差し替えます。(2010/12/06)

デモ動画です。ファイルのダウンロード・読み込みから解説しています。



立体視動画です。平行法立体視で見ることができます。モニタから少し距離を置くと見えやすいようです。

Reference:
Leonhardt R. and K. Fabian, Paleomagnetic reconstruction of the global geomagnetic field evolution during the Matuyama/Brunhes transition: Iterative Bayesian inversion and independent verification, Earth Planet. Sci. Lett., 253, 172--195, 2007.

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Copyright: The MAGE Project Team & Tadahiro Hatakeyama, Information Processing Center, Okayama University of Science, Japan