古地磁気・古地磁気学とは
古地磁気(こちじき)というのは、読んで字のごとく、「古」い「地磁気」です。
地磁気の項や地磁気ダイナモの項でご説明したように、地磁気の源は地球の外核で発生する巨大な電流です。ところが外核は液体で、絶えず複雑に対流しています。そのため、そこで作られる地磁気も絶えず変化しています。つまり、昔の地磁気は今の地磁気とは違う可能性があるのです。この昔の地磁気のことを古地磁気と呼んでいるのです。
古地磁気は地磁気のかつてあった状態ですから、当然、現在の地磁気を観測しているだけではわかりません。しかし、古地磁気を調べる大変有効な方法があります。それは、過去に作られた岩石に記録されている「地磁気の化石」を測ることです。地球上のほとんどすべての岩石には、ものすごく細粒の天然磁石(磁性鉱物)が含まれています。この天然磁石は、岩石ができるとき(火山岩なら噴出したとき、堆積岩なら海底や湖底で堆積したとき)に、そのときの地磁気の方向と平行に(その当時のそこでの磁力線に)そろって向くという性質があります。つまり、過去にできた岩石も、現在残っている磁石の方向を丁寧に調べてあげると、できた当時の地磁気が現在とどう違うかがわかるのです。
この、「さまざまな手法を駆使して、岩石から古地磁気を調べる」学問を 「古地磁気学(英語ではPaleomagnetism)」といいます。 古地磁気学はそれ自身が1つの学問ですが、他のさまざまな地球科学分野に応用されています。たとえば、大陸が移動していることはすでに事実のように語られますが、過去の移動の痕跡は古地磁気にもっとも色濃く残されているのです。古地磁気学は大陸移動・プレートテクトニクスの成立・発展に大きく寄与してきました。